Top > お知らせ > 中国人戦争被害者の日本政府への謝罪を求める行動を終えて
日本にとって敗戦80周年、中国にとっては抗日戦勝利80周年にあたるこの夏、私は中国人戦争被害者の要請に応えて、9月1日、日本政府に対して謝罪を求める行動を行った。
来日したのは、731部隊細菌戦被害者、そして長崎と北海道の炭鉱現場に強制連行された被害者の遺族たちである。同行したのは、この訪日団の責任者で、中国でも高名な国際法学者(博士)・管建強教授(中国抗日戦歴史史実維護会事務総長)、鐘恵明同維護会会長、浙江省寧波細菌戦実態調査者のジャーナリスト・裘為民氏たち計10名。当初、軍隊慰安婦にされた女性の遺族、重慶爆撃被害者遺族も参加予定であったが、9,3「抗日戦勝利80周年パレード」に急遽参加のため、映像での参加となった。

対日政府謝罪要求行動の趣旨は、謝罪要求を文書で提出するとともに、対面で政府担当者に対して、直接被害者たちの心情を訴えることであった。
その機会をつくってくださったのは、社民党党首・福島みずほ議員であり、福島みずほ事務所への連絡・調整をしてくださったのは鈴井孝雄社民党静岡県幹事長である。とりわけ、鈴井さんにはこの行動の実現に労をいとわずご協力をいただいた。ここで、改めて、心より感謝を申し上げたい。
当日は、参議院議員会館の会議室で行われた。政府担当者は外務省の「中国・モンゴル担当」の二人の官僚が出席。名前と顔写真は伏せるという条件が出されたため、ここでもあえて出さないが、どうやら、戦後補償問題についてはこの二人が「専属スタッフ」のようである。
まず、鐘恵明同維護会会長が、一行を代表して次のように述べた。
「日本の侵略戦争によって、甚大な被害を受けた中国と耐えがたい苦難を強いられた中国人民間戦争被害者に対して、正式かつ公式な謝罪を要求する」と述べ、「謝罪請求請願書」を手渡した。そのあと、四人の被害者遺族たちは、それぞれの被害を受けた親族の写真を見せながら、惨害の事実を口々に訴えた。

中でも、吉林省の農安で、祖父母と祖母の妹が、731部隊によってペスト菌を撒かれ、苦しんだ末に殺された馬燕さんが次のように訴えた。
「私たちの要求は、日本政府が侵略国としての責任を果たすことです。日本は中国を侵略し、抗日戦争に敗北しました。しかし、被害者にとって戦争は未だに終わっていません。それは、加害国の日本から、真の謝罪も受けていない、真の反省の言葉も受けていないからです」と、述べて、参加者の心を打った。
森は、日本の司法が細菌戦裁判で、731部隊の細菌戦や人体実験を認めた判決や、当日用意した資料=731部隊軍医の金子順一の残した細菌戦の報告論文などを示して、歴然たる事実があるにも拘わらず、未だに細菌戦を認めない日本政府の姿勢を批判。外務省側は「持ち帰り検討する」と、逃げの姿勢に徹していた。
これに対して、福島みずほ党首は「歴史史実は否定できない。
日本政府は過去を真摯に認め、日本社会に知らしめるべきだ。
そうでなければ、日本はアジアからの信頼も得られず、未来を築くことは困難だ」と、述べ、さらに追って質問事項を文書で提出する、と発言。
参加者は、東京在住者を含めて30名と、急な呼びかけにも拘わらず多くの皆さんに参加いただいた。メディアも関心があり、TBSやテレビ朝日、神奈川新聞、そして中国中央テレビ局(CCTV)が熱心に取材していた。
当初の予定時間よりも1時間もオーバーしたが、外務省が退出した後も、福島党首と服部幹事長を交えて、参加者ともども日本の平和運動のあり方や日中関係のあり方など、論議して終わった。
そして、三日後の9月4日、福島事務所を通して、次のようなさらなる追加質問を提出したが、10日に、文字通り木で鼻をくくったような回答が届いた。
見るほどに、不誠実極まりない石破政権の態度に腹が立つが、この回答を知った中国側被害者たちの怒りと対日不信感は深まるばかりである。
一応、参考までに記しておく。
外務省 御中
参議院議員 福島みずほ
再 質 問
9月1日、中国人戦争被害者の申入れについて意見交換をさせていただきました。
中国抗日戦争歴史史実維護会の代表鐘恵明氏、事務局長管建強氏より、改めて再質問が提出されました。回答をよろしくお願いします。
1.回答期限 9月10日(水)15:00まで
2.再質問内容
① 9月1日の意見交換で、村山首相談話『侵略戦争の反省とお詫びの立場に変わりはない』と発言したが、村山談話を踏襲するならば、石破政府は、そのような立場を世界に向けて公に発表すべき、と考えるが見解を示しされたい。
② 731部隊が、細菌戦を行ったことは、日本の司法で確定しているにも拘わらず、何故、石破政府は、731部隊の細菌戦を認めないのか、司法と日本政府の判断が、相反するということがあってはならないと考えるが、どうか。
③『陸軍参謀・井本熊男業務日誌』『731部隊員軍医・金子順一論文』『731部隊池田苗夫毒ガス実験資料』等の動かしがたい歴史資料が公文書であることは、日本の歴史学者の間でも通説と認知されているにもかかわらず、何故細菌戦、毒ガス戦を認めないのか?
④ 9月1日の意見交換では1937年9月に既に寧波に細菌戦が行われた、という新事実が明かにされた。日本政府として、国家の責任として調査をし、その真実を明らかにしていただきたい。
⑤ 本年3月21日の参院予算委で、山添拓氏の質問に対して、石破首相と中谷防衛相は「731部隊の詳細についての資料は政府部内に見当たらない。」と答弁しているが、果たして日本政府は今まで、被害者・被害国である中国での調査を行ってきたのか?その気があるならば、被害の実態・その資料をいつでも提供する。「731部隊の詳細についての資料は政府部内に見当たらない」とするならば、中国での被害調査をすべきであるが、見解を明示されたい。
⑥ 日本政府は、「反省とお詫び」を行う一方で、それと相反する発言・行動を行ってきた。例えば、歴史教科書の改ざんや政府高官による靖国参拝などである。「反省とお詫び」の表現は、世界に発信された国際公約であり、国際的信用の問題である。それを蔑ろにする行動は、日本への信頼を棄損するだけでなく、日本と中国、そして日本とアジアの友好関係と信頼関係を著しく棄損するものである。言行は一致させねばならないが、「言行不一致」である現状について政府はどのように認識しているのか明快な説明をお願いします。
2025年9月4日
中国人戦争被害者の申入れへの再質問に対する御回答
参議院議員 福島みずほ先生
平素より大変お世話になっております。
弊省に御照会いただきました表記の件につきまして、以下のとおり御回答させていただきます。
よろしくお願いいたします。
①及び⑥について、
石破内閣は、これまでの内閣総理大臣談話を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでおり、今後も引き継いでいきます。
戦後80年のメッセージの在り方については、先般、総理が記者会見や国会で答えられたように、現時点で決まっておらず、今までの談話の積み重ねも踏まえながら適切に判断するものであります。
②~⑤について、
これまでの政府部内の調査では、政府保存の文書中にいわゆる731部隊の活動状況を示す資料は見つかっておりません。本件の性格や時間的な経過にかんがみれば、更なる調査を行い、明確な形で事実関係を断定することは極めて困難と考えますが、新たな事実が判明する場合には、歴史の事実として厳粛に受け止めていきたいと考えています。
外務省 アジア大洋州局 中国・モンゴル第一課 課長補佐
2025年9月10日
尚、中国側は「あまりにも酷い回答書であるので、再々質問をする用意である」との連絡が、本日(9/20)ありました。機会を得て、また報告いたします。
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